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最高裁判所第三小法廷 昭和44年(オ)628号 判決

上告人

東京都

右代表者知事

美濃部亮吉

右訴訟代理人

三谷清

右指定代理人

渡辺司

外三名

被上告人

大極光明株式会社

右代表者

小倉恒雄

右訴訟代理人

谷村唯一郎

外三名

主文

原判決中上告人敗訴部分を破棄する。

右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。

被上告人は上告人に対し金一億三八一一万一三四三円およびこれに対する昭和四四年七月一〇日から支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

前項に関する裁判の費用は被上告人の負担とする。

理由

上告代理人三谷清、同指定代理人渡辺司、同糟谷昇三の上告理由第一点について。

原判決は、(1)第一審判決添付別紙目録記載の土地合計一八〇〇坪(以下「本件土地」という。)は、上告人の所有であり、昭和六年六月一七日開設を認可された東京市(都)中央卸売市場築地本場の指定区域内にある行政財産である、(2)被上告人は、上告人から昭和二一年七月二七日および同年九月三日の二回にわたりいずれも始期を同年八月一日とし、使用期間の定めなく、使用目的をクラブ、レストラン、喫茶、料理およびこれに附随する事業を営むために建物を建築所有することとして土地のうち一五〇〇坪と残三〇〇坪とを順次借り受けたが、右は私法上の契約によるものではなく、当時施行されていた東京市条例昭和九年第三七号東京市中央卸売市場業務規程にもとづいてされた行政財産の使用許可処分によるものである、(3)その後まもなく、本件土地のうち七五六坪が進駐軍に接収されることになつたので、上告人は、昭和二二年一一月二五日右七五六坪の使用許可を取り消した、(4)被上告人は、昭和二四年末残余の一〇四四坪の一部に木造瓦葺平家建店舗一棟建坪五五坪を建築し、翌年から喫茶店等の営業を営むようになつたものの、一〇四四坪のうちのその余の部分については被上告人の事業計画が上告人の方針に沿わず承認を受けるに至らなかつた等の事情から利用されずに経過していた、(5)一方、朝鮮戦争のころから中央卸売市場への入荷が急激に増加し、市場としては右土地をも自ら使用しなければ入荷物や多数集合する市場関係者の混雑を防ぐことができなくなつてきたうえ、被上告人の土地使用が不必要または不適切と認められたので、上告人は、昭和三二年六月二九日昭和二三年東京都条例一四七号東京都中央卸売市場業務規程を適用し、一〇四四坪のうち九六〇坪につき同月三〇日限り使用指定を取り消す旨の通告を被上告人に対してし、同年九月二二日行政代執行法により右九六〇坪上に存した前記建坪五五坪の建物を取消をしていない八四坪上に移転し、右九六〇坪を回収した旨判示したうえ、上告人が右九六〇坪についてした使用許可の取消によつて被上告人が受けた右土地についての使用権の喪失という積極的損害は特別の犠牲に当たるから憲法二九条三項にもとづきその補償がされるべきであるとし、かつ、右土地の使用権は借地権と同一視することはできないが、これときわめて相似するものであるとして、補償金額は更地価格の六〇パーセントを相当とするとし、右の補償を求める被上告人の請求を一部認容している。

ところで、本件取消を理由とする損失補償に関する法律および都条例についてみるに、本件取消がされた当時(昭和三二年六月二九日)の地方自治法および都条例にはこれに関する規定を見出すことができない。しかし、当時の国有財産法は、すでに、普通財産を貸し付けた場合における貸付期間中の契約解除による損失補償の規定をもうけ(同法二四条)、これを行政財産に準用していた(同法一九条)ところ、国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、公平の原則からしても国有財産法の右規定は都有行政財産の使用許可の場合にこれを類推適用すべきものと解するのが相当であつて、これは憲法二九条三項の趣旨にも合致するところである。そして、また、右規定は、貸付期間中の解除に関するものであるが、期間の定めのない場合であつても使用許可の目的、内容ないし条件に照らし一応の使用予定期間を認めうるときは、これを期間の定めのある場合と別異に扱う理由がないから、この場合にも前記規定の類推適用が肯定されてしかるべきである。もつとも、昭和三八年法律第九九号によつて改正された地方自治法二三八条の四および五は普通財産について補償の規定をもうけているだけで、行政財産についてこれをもうけていないが、そのことは、いまだ前記類推適用を否定する根拠にはならないと解される。そして、原判決の前記判示によれば、本件使用許可は期間を定めないものではあるが建物所有を目的とするというのであるから、前叙のところに従い右類推適用が肯定されるべきである。したがつて、本件損失補償については、これを直接憲法二九条三項にもとづいて論ずるまでもないのである。

そこで、この見地から、被上告人の本件損失補償請求を一部認容した原判決を是認することができるかどうかについてみるに、前記国有財産法二四条二項は「これに因つて生じた損失」につき補償すべきことを定めているが、使用許可の取消に際して使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は同条のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべきところ、原判決の前記判示によれば、被上告人は、上告人から上告人所有の行政財産たる土地につき使用期間を定めないで使用の許可を受けていたが、当該行政財産本来の用途または目的上の必要が生じて右使用許可が取り消されたものということができる。このような公有行政財産たる土地は、その所有者たる地方公共団体の行政活動の物的基礎であるから、その性質上行政財産本来の用途または目的のために利用されるべきものであつて、これにつき私人の利用を許す場合にその利用上の法律関係をいかなるものにするかは、立法政策に委ねられているところと解される。この点につき、昭和三八年法律第九九号によつて改正された地方自治法二三八条の四は、行政財産はその用途または目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる旨規定したのであるが、同法施行前においては、右改正前の地方自治法二一三条一項が公有財産の管理、処分等については条例の定めに委ねていたところ、本件については、昭和二三年一月一三日東京都条例第三号東京都都有財産条例三条および同条例全部を改正した昭和二九年三月三一日東京都条例第一七号東京都都有財産条例一二条において前記改正後の地方自治法二三八条の四と同旨の定めがされ、さらに古くは昭和一九年三月九日東京都規則第四号東京都都有財産規則三条において同旨の定めがされていたのである(なお、国有財産法一八条参照)。したがつて、本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によつて与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。すなわち、当該行政財産に右の必要を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひつきょう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであつて、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。

それゆえ、被上告人は、むしろ、上告人に対し、本件行政財産についての右の必要のもとにされたと認めうる本件取消によつて使用権が消滅することを受忍すべき立場にあると解されるから、被上告人が本件取消により土地使用権の喪失という積極的損失を受け、この損失につき補償を必要とするとした原判決の判断は、さらに首肯しうべき事情のないかぎり、これを是認することができないのである。もつとも、原判決は、被上告人が本件使用許可を受けた際上告人の依頼により本件土地を整理、宅地化するため相当の費用を支出したことをもつてあたかも借地権取得に際し権利金を支払つたのと対比することができる旨判示しているが、右の一事をもつて被上告人の使用権を借地権に比することはできないというべく、右の事情もいまだ原判決の前記判断を是認するに足りるものではない。したがつて、原判決には法令違背があることに帰し、ひいて審理不尽、理由不備の違法があるものというべきである。そして、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、その余の上告理由について判断するまでもなく原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れず、本件は前叙の観点からなお審理をつくす必要があるので、右部分を原審に差し戻すこととする。

つぎに、上告人は、本判決末尾添付の申立書のとおり、民訴法一九八条二項の裁判を申し立て、その申立の理由として主張する事実関係は、被上告人の認めるところである。そして、原判決中前記部分が破棄を免れないことは前段説示のとおりであるから、原判決に付された仮執行宣言がその効力を失うことは、論をまたない。したがつて、右仮執行宣言にもとづいて給付した金員およびその執行のために要した執行費用に相当する金員ならびにこれに対する右支払の日から完済まで年五分の割合による民法所定の損害金の支払を求める上告人の申立は、これを正当として認容しなければならない。

よつて、民訴法四〇七条、一九八条二項、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(坂本吉勝 関根小郷 天野武一 江里口清雄 高辻正己)

上告代理人三谷清、同指定代理人渡辺司、同糟谷昇三の上告理由

第一点 原判決は憲法二九条三項の適用を誤つている。

一 原判決は、本件土地の使用権は私有財産であるから「もし使用許可の取消しにより財産上の犠牲が一般的に当然に受忍すべき制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものとみられる場合には、直接憲法二九条三項を根拠に補償の請求をすることができるものと解するのが相当である」、本件使用許可の取消しないし回収は「社会通念に照らしても当然に受忍すべき制限の範囲をこえないものとはとうていいえないから、控訴人に特別の犠牲を負わしめるものであることは明らかである」と判示している。

しかしながら、後述するように公権である本件土地の使用権が、その経済的効用の点からみて私有財産としての一面を有することは、仮りにそのとおりであるとしても、本件使用許可の取消しが受忍すべき制限の範囲をこえたものであるかどうか、特別の犠牲を課したものであるかどうかを判断するためには、本件土地の使用権の性質、内容いかん、それと使用許可取消しとの関係などが充分に検討されなければならない。

まず、本件土地は公共性の強い東京都中央卸売市場内の土地であつて、公有財産のうち行政財産に属するものであり、その使用許可は東京市中央卸売市場業務規程に基づいてなされた使用許可処分であることは原判決も認めるところであり、従つて、本件使用権は公法上の権利であるから、私法上の借地権のように絶対的のものではなく、公益上の種種の制限を受けることは当然であつて、使用権の内容は業務規程(東京都条例)、使用許可書などによつて定まることとなる。

ところで、本件土地の使用期間については、仮りに原判決の認めるように、その定めがなかつたものであるとしても、建物所有を目的とする一般の借地権のように、建物の存在する限り原則としていつまでも使用関係が永続するというようなことは、当初から保証されてはいないのである。何となれば、ほんらい行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度において、例外的に第三者に使用を許可することができるのである(東京都都有財産条例(乙第一〇号証)一二条、現行の地方自治法二三八条の四、三項参照)から、その公共目的に妨げを生ずれば、いつでもその使用を終了せしめうるのでなければならないことは当然であり、このような趣旨は、本件使用許可当時の業務規程(乙第二号証)五八条、改正された業務規程(乙第一号証の一)四六条に規定されているのであつて、要するに、公益上本件土地を必要とするときは、使用許可を取消して使用関係を終了せしめる制約が本件使用許可処分に内在するものというべきである。別言するならば、本件土地の使用許可はいわゆる公法上の契約と考えられるから、そうとすれば使用許可の取消しによる使用関係の終了(不確定期限の到来あるいは解除条件の成就)については、被上告人は使用許可の時において、いわゆる付従契約的に当然にこれを承諾したものと解すべきである(乙第三号証の一―四参照)。

もつとも、上告人が公益上本件土地を必要とする事由の有無については、単なる上告人の恣意的判断によることは許されず、上告人、被上告人双方の側の諸事情を勘案した上での客観的正当性を有するものでなければならないが、この点について原判決は「右使用許可の取消しは、市場業務の拡大に伴ない当初使用を許可した当時と著しく事情が変更し、市場秩序を保持し、公共の利益を保全するため必要があつたことと、控訴人の土地の使用が不必要又は不適当と認められたためにとられたものであつて、結局公益上の必要からなされたものであることが認められる。」、「したがつて被控訴人の使用許可の取消しおよびこれに基づく執行は適法な公権力の行使というを妨げず、」と判示しているのである。

以上のとおりとすると、本件土地の使用関係は、当事者間であらかじめ定められた公益上本件土地を必要とする場合の不確定的な終了時期が到来したために終了したまでのことであつて、所定の使用期間の中途において使用許可を取消すのとは根本的に異なるものであり、引例が適当でないかも知れないが、期間の定めのない借家関係が貸主の正当の事由に基づく解約の申入れによつて終了し、あるいは建物所有を目的とする借地関係が貸主の正当の事由に基づく契約更新の拒否によつて終了するのと同様、使用許可をした側(貸主)の公益的立場が保護されるべきであることは当然であるから、本件使用許可の取消しは被上告人において当然に受忍すべき制限の範囲内に属するものであるのにかかわらず、原判決は以上述べたような点について審理を尽さず、漫然と受忍すべき制限の範囲をこえるものと判断し、憲法二九条三項を適用したことは誤りである。

二 要するに、憲法二九条三項は、私有財産を公共のために用いることができること、その場合正当な補償を要することを規定しているが、本件土地は、もともと公共のために用いられる財産なのであつて、その使用許可をしても、市場としての公共用途は潜在しており、それが使用許可に内在する制約に基づく使用許可の取消しによつて顕現しただけのことであつて、私有財産を今始めて公共のために用いるのとは全く事情を異にするのである。もつとも、等しく公共のために用いるといつても、仮りに本件土地をその本来の用途以外、例えば道路、公園等の敷地のために使用するというような場合は、使用許可の際に全く予想しないところであつて、かかる用途に使用できるという制約は許可処分に内在せず、外来的原因によるものであるから、あるいは受忍すべき制限の範囲をこえるものとして前記憲法の規定が適用されるべきであるかも知れない。しかるに原判決は、右のように公共のために用いるといつても内在的のものと外来的のものと二つの場合があるのに、この二つを区別して考えることなく、ただ漫然と本件の場合に憲法の規定を適用する誤りをおかしているのである。

三 なお一般的にいつて、憲法二九条三項を直接適用するのは、当該損失の補償に関して法律の規定を欠いており、かつ類推適用するに足る他の適当な法律も全く存しない場合に限るべきものではないかと考える。

しかるに、地方自治法二三八条の五は、普通財産を貸し付けた場合において、その使用期間中に公用、公共用に供するため必要を生じたときは契約を解除することができるが、その場合借受人に対して損失を補償すべきことを規定しており、また国有財産法二四条も右と同様趣旨のことを規定し、かつ行政財産の使用許可の取消しの場合に準用(一九条)しているのであるが、これらの諸規定によると、要するに所定の使用期間の途中において契約を解除するとか、使用許可を取消す場合以外の事由により使用関係が終了した場合には損失補償をする必要がないという趣旨が反面の解釈として含まれていると解することができるのであるが、これらの諸規定は、本件土地が公有財産であることからみて類推適用するのにきわめて適用な規定であると考えられるので、そうすると、本件使用許可の取消しは、上述したように期間の途中において使用関係を終了せしめたのとは事情を全く異にし、いわば不確定的な終期の到来によつて使用関係が終了したのであるから憲法二九条三項の適用前の問題として、すでに前述した法律の諸規定の類推適用上、本件の場合には、上告人に損失補償の義務のないことが明らかである。〈以下略〉

仮執行の原状回復命令の申立

申立の趣旨

被上告人は、上告人に対し、金一億三八一一万一三四三円及びこれに対する昭和四四年七月一〇日から支払いずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

との裁判を求める。

申立の理由

一 原審東京高等裁判所は、昭和四四年三月二七日、控訴人(被上告人)大極光明株式会社、被控訴人(上告人)東京都間の借地権確認土地引渡等請求控訴事件(同裁判所昭和三九年(ネ)第二四九六号)について、左記主文の判決を言い渡した。

原判決を左のとおり変更する。

被控訴人は控訴人に対し、金一億八〇万円およびこれに対する昭和三七年二月一三日から支払いずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟の総費用はこれを二分し、その一を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。

この判決は、主文第二項にかぎり、控訴人において金額二〇〇〇万円の担保を供するときは、仮に執行することができる。

二 上告人は、右判決の上告人敗訴の部分を不服として、昭和四四年三月二八日、本件上告を提起したのであるが、上告人は、右上告を提起するとともに同日、東京高等裁判所に対し、右判決に基づく強制執行の停止を求める旨の申立(同裁判所昭和四四年(ウ)第二六五号)をなしたところ、同裁判所は、昭和四四年三月二九日「その執行により償うことのできない損害を生ずべきことの疎明がないものと認められる」として右申立を却下した。

三 そこで、被上告人は、右の仮執行宣言の付された判決に基づき強制執行をすべく昭和四四年四月一二日、東京高等裁判所より執行文の付与を受け、同年七月三日仮執行の担保として、金二〇〇〇万円を東京法務局に供託して、同年七月九日東京地方裁判所執行官職務代行者金子和喜(以下単に「執行官」という。)に対し、左記請求金額について有体動産差押の申立をなした。

一金一億八〇万円

但し、元金

一金三七三〇万九八〇八円

但し、昭和三七年二月一三日から昭和四四年七月九日までの損害金

合計金一億三八一〇万九八〇八円

四 被上告人の右申立を受けた執行官は、昭和四四年七月一〇日上告人の住所地に臨み、上告人所有の左記の小切手及び現金を差押え、即日これを被上告人に引渡した。

一 小切手額面金一億八〇万円也 一枚

一 現金 金三七三一万一三四三円也

(但し、そのうち金一五三五円は執行費用)

五 右の次第であるので、御庁において、本件上告を容認され原判決を破棄されるにあたつては、右の執行を受けた物に相当する金員の返還及び右執行の日以降上告人が蒙つている法定利率相当額の損害の支払いを命ぜられたく、民事訴訟法第一九八条第二項の規定に基づき、本申立をなすものである。

六 なお本申立に印紙を貼用しない理由を付記する。

本申立の性質は訴の提起と同様であるとして民事訴訟用印紙法(以下「法」という。)第二条による印紙を貼用すべきであるとの見解もある。

しかしながら、法が印紙を貼用すべきものとする趣旨は、裁判所が特定の個人のために提供する公の役務についてその費用を償うためあるいはその報償として手数料を徴収するの意なのである。したがつて、本件申立のように本案の審理の結果からおのずからその当否が明らかとなるような場合には、右の意味での手数料を徴収する理由はないものというべく、本件申立には、法第四条の反訴に関する規定を類推適用して、印紙の貼用を要しないものと解すべきである。 以上

(添付書類省略)

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